宇都宮 由佳, 益本 仁雄
家政誌 50(10) 1035-1048 1999年
児童・生徒の間食を選ぶ行動を通して, 北タイにおける地域差を明らかにするため, 都市部のチェンマイ, 郊外の町ファーン, 農村部のサムーンで, アンケート, ヒヤリング等の調査を実施した.調査結果は, 家政学, 統計学, 社会学等の方法論を用いて分析した.その結果は以下のとおりである.<BR>(1) 間食の出現率合計や1人あたりの間食の種類数で, チェンマイが最も多く, 次いでファーン, サムーンの順となり, 顕著な地域差があることが認められた.<BR>(2) チェンマイの児童・生徒は, 多様な種類の間食を食べているのに対し, サムーンの児童・生徒は, 種類も少なく, よく食べる間食とそうでない間食とに2極化することが認められた.<BR>(3) 各地域の出現率を高い順位に並べたところ, 高い順位 (果物, 牛乳など) と低い順位 (ゼリー・グミとスルメ) の間食は, 地域間で同じであることが分かった.また, 中間的な順位を占める間食 (ファーストフード, 炭酸飲料, チョコレート, タイおやつなど) は, 地域によって異なっていた.<BR>(4) 各間食の出現率の地域比較において, 五つのパターンが認められた.<BR>(5) これらの地域差の生じる要因は, まず経済的要因として, 児童・生徒の小遣いの多少, 販売価格, 販売店の有無・多寡, 販売方法などである.つぎに社会・文化的要因として, チェンマイの欧米志向と新奇性・積極性, ファーンの自己完結性と保守性, サムーンの貧困性と消極性などの地域特性と, 情報量 (テレビCM, 友人からの情報など) の地域差等があげられる.各間食に対して, それぞれの要因の影響の強弱や組合せが異なることによって, 間食を摂る行動に地域差が生じたと考えられる.