Sato Sachiko, Kuwano Eriko, Nakajo Shoko, Utunomiya Yuka
Abstracts of the Annual Meeting, 29 10-10, 2017
【目的】学生たちの取り巻く食環境は、消費社会の中で家庭での調理体験が極端に少なくなっている現状にある。そのため調理過程を想像することができず, 個々の家庭で経験する調理は危機的状況にある。高等教育機関において, 調理教育は体系的に調理に関わる知識や科学的に解明できる技術を習得できる教育である。また, 多くの場合, 教員の主観に委ねられた評価が先行し, 良否を判定し質的評価とする場合が多い。そこで, 本研究は, 学習者自身が自分のパフォーマンスを直接評価するために質問紙調査を実施し, 学生が「何ができると思っているのか」「どのように学習したいか」, 学生自身に提示させることで現状を明らかにし, 今後の調理教育における有効なアクティブラーニングを検討することを目的とした。<br />【方法】調理教育の現状について、対象は女子大生251名とし, 2015年と2016年に調理実習科目(2単位)を履修した学生にアンケート調査を行った。内容は大学入学前の7項目の食環境について, 調理実習科目を履修した後に「学んだこと」23項目, 調理実習の学習方法,教育方法について調査を行い, 選択回答は項目ごとに集計した。なお, 本研究の調査の対象とした授業は, 調理の基礎的知識と技術をデモンストレーションとグループ実習を組み合わせて行う調理学実習である。授業の進め方は, 事前に授業内容を学内LANで共有し授業を受講するスタイルである。<br />【結果】アンケートの結果,「調理実習への態度」の質問では, 最も多かった回答は「他人へ指示はできないが,自分が何をするか周囲に伝えて調理するタイプ」61%,次いで「積極的に声をかけ,周囲へ指示するタイプ」18%を示した。また,「積極的に声をかけ,周囲へ指示するタイプ」の約半数が3歳から6歳の幼児期から家で調理をしていると回答したことから, 個々の経験や体験が調理教育において重要であると推察された。履修後のアンケート「実習班は固定より変わるほうが良いか」では約74%が良いと回答し, グループメンバーをローテーションすることで「何ができたか」など思考力の質的向上を認識できると思われた。「胡瓜の小口切りの技術は身についたか」では約85%が身についたと回答した。調理教育においてパフォーマンス評価は, 学生自身の感性を引き出し,個々を評価することができるとわかった。 今後, グループ実習スタイルの中で自己評価するためのパフォーマンス評価を確立していきたい。